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「ハハ。落ち込んで生き返るなら、とことん落ち込んでやるけど。真智は?」
「今はもう大丈夫よ」
「じゃあ最近まで落ちてたんだね」
「そうね。人並みに」
「真智にもあったのか、人並みな感情が」
「ずいぶんね。道孝に迎えにきてもらうわよ」
「真顔で言うなよ、怖いから」
そんな話をしていると、階段の下から母親が俺の名を呼ぶのが聞こえた。お茶とお菓子を運べというものだった。「持ってきてくれてもいいだろ」とブツブツ言いながら、階段をおりる。
盆を受け取って部屋に戻ると、ベッドの上に転がったままだった俺のケータイのアラーム音が鳴っていた。昨日昼寝をした時にセットしたままだった。
「あ、悪い。止めて、真智」
俺は手がふさがっていたので、真智に頼んでケータイの操作を頼む。頷いた真智は、俺のケータイを手に取った。
「…………」
アラーム音が止まる。けれども、真智は俺のケータイ画面を見つめたまま、動かなくなった。
「何これ?」
「は? 変な画像でも表示されたままだった? ………………て、あっ」
瞬時に思い出して、真智の手からケータイを奪うように取る。すると、微動だにしなかった真智が、顔だけ俺の方へ向けた。
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