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「今すぐ本人に本当のことを伝えて、こんなバカげたことは一刻でも早く止めるべきだわ」
案の定、すべての事情を聞き終えて発した真智の第一声は、これだった。
「きれいな話にしようとしているけど、ただ騙してるだけじゃない」
「分かってるよ。でも」
俺はベッドのふちに寄りかかりながら頭をかき、そして、
「遺言なんだよ。道孝の」
と続けた。
「…………それでも……」
真智はいつものクールな表情を崩し、目を潤ませながら苦虫を噛み潰したように眉間にシワを寄せる。
「そんなの……ダメに決まってる。私、本人に伝え――」
「真智」
俺はまっすぐ真智の目を見て言葉を遮った。
「お願い。黙ってて」
「そ……」
「頼む。今年のクリスマスイブまでなんだ」
俺は寄りかかっていた体を起こして、頭を下げた。しばらくそのままで、顔を上げなかった。
真智はその間何も言わなかった。無言のままですくっと立ち上がり、部屋から出ていった。
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