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【懐かしい?】   公園で撮った双子の写真が添付されてきたメールを見て、春休みに噴水で遊んでいた子どもたちだと思った。これが勇と藍か。以前、道孝から聞いたことがある。甥っ子たちを保育園に迎えにいくのが日課だと。 【懐かしいよ。可愛いね】 小野田倫と話したり観察したりして分かったことは、友人関係がものすごく狭く、表面的にはみんなに合わせるものの、心を許して話しているのは西元(にしもと)恵子だけだということだ。男子とも話さないことはないけれど、これも必要最小限にとどめている。   運動神経はあまりよくなく、運動系の部活にも入っていない。だからといって文化系の部活に入っているわけでもなく、お迎えのために放課後はわりと早めに帰っている。   昼ごはんの時間は必ずと言っていいほど学食にいて、西元恵子とふたり、窓際のテーブルで談笑している。色素の薄い髪が光を受けてキラキラ輝いているから、すぐに見つけられた。 「…………また笑ってる」 クラスで見せるのとは違う顔で笑い、必死に何かを説明したり、かと思えば急にしょげる仕草をしたり。空気を抜いたようにヘナヘナと机に突っ伏す倫に対し、西元恵子が「大丈夫だよ、私が録画してあるから」と言っている。口の動きで分かった。 「……テレビの話かよ」   ハ、と呆れた笑みがこぼれる。週1で友達と学食で食べるときには、彼女の観察がすでに習慣となっていた。 「おい、甲斐」 「は?」 「カレー、シャツに落ちてる」 「…………最悪」
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