《甲斐 敦義》1

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【敦義へ。 例の話、本当にいやだったら受けなくていい。でも、もし受けてくれるんなら、よろしく頼む。彼女は強がりで、なかなか弱音を吐けないから、メールで相談してきたときは、ちゃんと聞いてやって。クリスマスイブまででいい。それまででいいから、倫の彼氏になってくれ。 ごめんな、敦義。今までありがとな】 「…………」 ……どれだけ彼女が好きなんだよ、アホ道孝。 手紙を握る手の力で、紙にシワが寄る。 『今年のクリスマスイブまでは、俺に代わってメールだけで交際を続けてほしい。イブは倫の誕生日でもあって、去年の冬に約束したんだ』 『それ以降はメールを返さなくてもいい。じきに自然消滅になるだろうから』 『あ、でも、そうしたら、俺は倫の中でずっと生きたままでいられるってことだな。なんかロマンチックだな』   そう言って微笑んだ道孝のことを思い出す。たった3週間前の会話だ。 クリスマスイブに何があるっていうんだ? 道孝自体はいないというのに。 尋ねようにも、この紙切れからは返事はない。 「…………」   封筒の中には、小さい頃に一緒に集めていた飛行機雲の写真が数枚、そしてもう一枚の半紙。そこにはメールアドレスとアカウントIDとパスワードが書かれていた。 「…………絶対しねーよ、アホ」   それは高2にあがる直前の春休み、バカみたいに晴天の日だった。
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