《甲斐 敦義》1

7/8
前へ
/35ページ
次へ
「…………」   ケータイでウェブメールのアカウントにアクセスして、道孝が引っ越してからの2ヶ月足らずのやりとりを見た。俺は、前のめりにしていた体を椅子の背にようやく預け、大きなため息をつく。 「…………悪趣味だ、こんなの」   自分以外のメールのやりとり、しかも仲が良かった従兄弟の恋人とのやり取りは、精神的にけっこうクるものがあった。   最初の電話はばあちゃんちからかけたんだろう。入院中、道孝の病棟はパソコンの使用が可能だと言っていたから、その後のメールのやりとりは病室で。後半、返事が返せなくなったのは、時期的に…………。 「バカだな、アイツ」   喉元が熱くなるのを感じた俺は、顎を上げ、無理やり頭を振って紛らわせる。道孝がどんな心持ちだったのか、と考えないように。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

432人が本棚に入れています
本棚に追加