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「倫…………か」
メールでの文面を見る限り、素直で気ぃ遣いで……そして道孝のことが本当に好きなんだっていうのが伝わってくる。
「…………バレねぇのか? ホントにこれ」
俺は、そう呟きながら、今までのメールを繰り返し隅々まで読むことにした。道孝から聞いていた倫の話と、メールでのやりとりや口調、それらを頭に叩き込まない限りは成立しない。道孝の遺言を、全うできない。
【心配かけてごめんね。ネットの調子が悪かったんだ。元気だよ。桜はもう散った。でも、葉っぱが芽を出してる】
散々考えた挙句、俺が初めて倫に送ったメールは、なんともギクシャクした短文の集まりだった。送信し終えた指は、わずかに震えていた。
ようやく決心がついたような、けれどもどこか人の道を外したような、そんな複雑な思いがため息となってケータイ画面に落ちた。
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