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「倫ちゃんは映画とか小説は、何系が好き?」 「うーんと……ラブコメディとかかな」 「へぇ。俺はゾンビ系」 「そうなんだ」 「目玉焼きには何つける派?」 「醤油」 「へぇ。俺はマヨネーズ」 「ふーん」 倫とは、少しずつ話をするようになった。 1日に1、2回、メールで使うかどうかも分からない会話を交わしたり、挨拶をしたり。メールと道孝情報でどんな女の子なのか分かっているから話しやすく、壁を感じることはあっても、徐々にその壁が低くなっていく確信もあった。 【おつかれさま。元気? 4月ももうすぐ終わるね。そういえば道孝の友達の甲斐くんと同じクラスになって、少しだけ話すようになったんだけど、なんていうか不思議な人だね。たしか中学から一緒だったんだよね?】 【そうだよ。敦義と同クラになったんだね。悪いやつじゃないから、構ってやって。俺は元気だよ。倫は友達できた?】   メールにも慣れてきた。けれども、自分のことに対して自分で答えるのは妙な気分だった。この先、悪口を書かれる可能性もあるかもしれないと、密かに覚悟をする。 【心配しなくて大丈夫だよ。頑張るね!】   彼女からの返信はいつも、ポジティブだった。『彼女は強がりで、なかなか弱音を吐けない』と道孝が言っていたのを思い出す。 「…………〝大丈夫だよ〟……か」   たまに見せる彼女の嘘っぽい笑顔が頭をよぎった。倫は、あまり積極的に周囲に関わらない。俺が話しかけなければ、休み時間もずっと席についたままだ。見る限り、いまだに友達と言えるような存在はできていなかった。
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