《小野田(おのだ) 倫》8

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《小野田(おのだ) 倫》8

「倫、お母さん眠たいし、ちょっと頭が痛いから、双子を連れて公園でも行ってきてちょうだい」   土曜日の昼下がり、勇と藍がケンカをして、ふたりとも大声で泣いている中、寝室から出てきたお母さんが、頭を押さえてそう言った。   今日はお姉ちゃんは研修があって、夜も遅くなるらしい。お母さんは夕方から夜勤。そのことを知っていた私はバイトを休み、朝から家で子どもたちと遊んでいた。 「分かった」   笑ってそう答えた私は、 「ほら、お薬曲歌うから、泣かないで。一緒に公園に行こう」 と、ふたりの手を引く。 「いやだっ。おもちゃで遊ぶのっ」 「だからそれは藍が使ってたやつだもんっ」   ケンカ続行中で引き下がらないふたりの手を無理やり引いて、私は家を出た。暴れるから重たいふたりの手。お薬曲をずっと鼻歌で歌っても、 「そんな歌、効かないもんっ」 と、駄々をこね続ける。私はそれでも、鼻歌を歌い続けた。   やっとのことで噴水公園まで来た私は、機嫌が悪かったのが嘘みたいに遊具へと駆けていくふたりのうしろ姿を見ながら、定位置のベンチにうなだれるように座った。 「…………はーーーーっ」   盛大なため息を吐いて、手で顔を覆う。指の隙間から見えるどんぐりは、くすんで汚れた茶色だった。  
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