《小野田(おのだ) 倫》8

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「偉いわね」 「そうかな?」 「私は犬の散歩ですらいやいややっているのに」   里平さんの連れていた犬は、ベンチの足にリードを括りつけられて、近くに散らばっているどんぐりの匂いをクンクン嗅いでいる。   12月の、昼間でも冷たさを帯びている風。木の陰になっているというのもあって、私たちは体を縮こませる。 「何か……進展があったの?」   里平さんは、空を見上げながら静かに聞いてきた。 「最近、敦義と話しているところ見ないし、小野田さんの顔も気持ち悪いわ」   細い目で隣の私を見て、里平さんは腕組みをする。彼女とこういうふうにゆっくり話すのは、体育祭以来だった。 「気持ち悪いって……」 「無理やり笑ってる感じ。あなたの周りの女子からは言われない?」 「…………言われないけど」   徳原さんや谷本さんたちのことを言っているのだろう。彼女たちは、自分の話か、その場にいない人の話しかしない。 私も彼女と同じように空を仰いだ。鰯雲が空を覆っていた。
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