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煙たい町
町は煙に包まれていた。
その煙はまるで毒ガスだ。触れた仲間が何人も目の前で消えていく。
あれに触れてはいけない。触れたら俺も消滅してしまう。
その思いで必死に煙を避け、蔓延する煙が消えるのを待ち続けた。
送り火と呼ばれる盆の風習。焚かれて立ち上る煙は、この世に招かれた霊達をあの世に返す。
判ってる。本当はあり煙に送られて天に上るのが霊には一番の幸いなんだ。でも俺は、まだこの世に居座っていたいんだよ。地縛霊になるとしても、ずっとずっとこちら側にいたいんだよ。
だからこの時期、俺はひたすら逃げ回るんだ。町中に立ち込める、浄化の煙に触れないように。
煙たい町…完
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