アイロン

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「おはよう、よく眠れた?」 足音で気づいていたのだろう、僕がキッチンに入って声をかけるより前に、彼女のほうからそう話しかけられた。 とんとんとん、というあの音は止まっていて、見れば、彼女のすぐ近くに包丁とまな板、等間隔に切られたキャベツがある。 「おはよう。朝早いんだね」 「いつも通りよ」 事も無げに彼女は微笑んだが、いつもを知らない僕からしたら、寝起きの相手のために毎朝用意されていたであろうその笑顔すら新鮮だった。
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