お台場

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お台場

お台場にあるビルを一歩出ると、猛烈な熱気が襲ってきた。 「もう、夕方4時過ぎなのに、やれやれ」と圭介は思った。ビル正面のゆりかもめの高架を見ながら、台場駅に行くか、お台場海浜公園駅に向かうか、迷った。 合理的に動くことが多い圭介は、いつもならば迷わずお台場海浜公園駅に向かったはずだが、その日は迷ったのだ。 顧客との打合せが1時間も延びて、16時半からの社内ミーティングを別の日に延期、直帰することにしたので、時間に余裕ができてしまった。次は18時30分に汐留へ行けばよかった。 社内ミーティングの延期を会社に連絡したとき、電話口に出たまだ新人の(しかし、結構優秀な)小枝子が元気に「承知しました。全員のスケジュールを確認して週明けに設定しなおしておきます!」と言ってくれたが、きっと、週末の今からだと参加者のスケジュール調整に苦労するだろう。 来週水曜日までに済ませば良いミーティングだったので、小枝子が調整しきれなければ、自分がなんとかすれば良い、と圭介は思い、任せた。 「まだ、早いな」圭介は時間を潰すつもりで台場駅の方へ向かった。 8月の金曜日、夏休み期間という事もあり、平日なのに台場は親子連れで賑わっていた。 いつも思うが、この賑やかさは嫌いではない。圭介同様結婚していない同僚は、鬱陶しいと言うが、圭介はこの賑やかさが微笑ましく思えていた。 親の後を小走りについていく兄弟、愚図る子供を引っ張っている父親、疲れ果て子供と旦那、両方に文句を言っている母親。どれもが、微笑ましい。 もしかして、一種の結婚願望? ふっと、頭をよぎったが、深くは考えなかった。 あまりにも暑いので、以前、訪れて雰囲気が好きだった台場のロングボード・カフェで自由の女神を見ながらPRIMOを呑んで時間を潰した。 1時間ほど時間を潰して、駅に向かった。 今日は汐留のCホテルに部屋を取っていた。千尋とはロビーで待ち合わせをしていた。まだ早いが、あとはロビーで待っていよう、と思った。待ち合わせはいつも圭介が早めに行って待っていた。
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