恋のはじまり

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部屋に入ると、照明を抑えているので、夜景が美しく見えた。大きく開いた窓側に置かれた長いソファーが特徴的な部屋だった。窓と平行に足を投げ出し座ると、夜景の中に浮いているような感覚になる。 圭介は、しばしソファーに座って水を飲みながら夜景を見てから、「さあ、誰もいないだろう。チェックが終わったら帰った方がいい。ロビーまで送るよ。よかったら、近々また会おう」と言った。 恵子はひとり暮らしだったはずなので、そのまま引き留めても問題はないのだが、千尋と別れたその日に、恵子とホテルに泊まるのは、今までの圭介の美学からは外れていた。 なので、とにかく、今日は帰そうと思っていた。 恵子はその言葉には反応せず、圭介と同じ方向に、寄り添うように、半分圭介の上に座るように、ソファーに座った。 圭介は自分の上に座り不安定な恵子が落ちないように、左手で後ろから抱きしめた。 恵子からパッションフルーツのような甘い良い香りがした。 「いい香りだ」 「ブルガリなの。オムニア パライバ」 「夏らしい香りだね」 「そうでしょう。私もそう思って。夏だけ使ってるの。・・・ねえ、帰らないとダメ?」 「ウン、その方がいいと思うけど」と言ってはみたものの、かなり迷っていた。 圭介の回した左手の上に恵子も両手を重ねた。そして顔を振り返るように圭介の方へ向け少し上を向くと、唇が圭介のすぐ前にあった。 圭介は、そのまま唇を重ねると、恵子の方から舌を軽く入れてきた。 しばらく舌を絡めるキスをしたあと、恵子は顔を圭介の胸に埋めるように、そして全てを委ねるように、しだれかかって来た。恵子の右首筋の上から胸の谷間が見えた。 圭介は恵子をしっかり後ろから受け止めていた。左手は相変わらず恵子の前に回していた。 自由な右手を恵子の右肩の横から伸ばし、ネックレスを避けながら恵子の首筋から左胸の膨らみへ這わせた。ブラジャーの下に手を滑らせると指に張りのある柔らかい感触を感じることができた。恵子はその間、一切、嫌がらず圭介の自由にさせていた。 圭介の指が恵子の左胸の乳首を捉えた時、恵子が「あ・・・」という甘い小さな声を出した。その声を聞いた圭介は、そこから先を自制することなど出来なかった。
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