第1章

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私は今、沢山の幽霊を掻き分けながら会社に出勤する途中だ。 何故幽霊を掻き分けながら出勤しているかと言えば、地球温暖化が原因である。 夏の最高気温が60度を超えたとき、オカルトやホラーに造詣が深い政治家の発案で、政府はある条件を見返りに妖怪や幽霊と契約した。 そのお陰で私達国民は、昼間から出ている幽霊を掻き分けながら出勤する事になったが、冷房の効いた部屋の中にいるのと同じくらいの冷気の中を歩けるようになる。 見返りに出した条件とは、山や海の自然を保護すると共に、街を昔ながらの情緒溢れる街並みに戻す事。 人間を怖がらせに出てくる妖怪や幽霊にしてみれば、川を覆うように造られた道に出現するより、小川のせせらぎが聞こえる川縁に出現した方が趣があるとの思いから。 だから私達国民も昼間涼しい環境で移動できる見返りに、夜、妖怪や幽霊に出会ったら、悲鳴を上げ怖がる事を義務づけられている。
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