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約束をないがしろにした相手への八つ当たりだろうか。それとも、何か不愉快なことでも思い出す内容が書いてあったのだろうか。タイトルの通り、恋愛をモチーフにした例え話も多く掲載されている。
自分のせいではないのに、なんだかやけに気が咎めてしまう。
「いや、そんな風に言われるとむしろこちらが恐縮しちゃうな。忘れ物を責めるつもりじゃなかったんです。それより、本を置き忘れてしまうほど心ここにあらずみたいだったから、大丈夫かな、って少し心配になって」
そう言って、励ますように笑いかけた。
「ええと……ありがとうございます」
意外なことを言われたという表情で、彼が顔を上げる。
改めて、端正な顔だな、と思う。端正といっても女性のように線の細い美しさではない。少し角ばったような輪郭は男性的だし、まっすぐな眉も涼しげな目元も、軟弱な印象は微塵もなく、意志の強さを感じさせる。
好きな顔だ。間近で見てもそう思う。自分が女顔だというコンプレックスの裏返しなのか、綺麗でも中性的なタイプにはあまり惹かれない。
ふと、慶介の顔が浮かんだ。
その瞬間、とんでもない企みが雅巳の頭に降って湧いた。不謹慎な思い付きが瞬く間に大きく育っていく。
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