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衝撃から随分と遅れて、上から何かが舞い落ちてきた。二次災害で天井が崩れる……なんて事はなく、目が追ったのは小さなホコリや屑だ。思えば、こんなに色んな物が吹き飛び散らかってるというのに、壁にも窓ガラスにもヒビすら入っていない。それどころか根は教室内を守るようにうごめき、みるみる机にも絡みついていく。
(……?)
ふと、右手の小指に、木の根じゃない何かがぶつかった。拾い上げて目を凝らせば、見覚えがある黒いフレームの眼鏡じゃないか。幸運にも壊れていないようだけど、肝心の持ち主の姿が見えない。
「犬飼!どこ!?」
「…日野?」
(…っ、後ろだ!)
痛む身体を無理やり起こし、声がした方向を振り向いたはいいけれど、折り重なっている机の塊が邪魔で先が見えない。
犬飼は歩けないから、俺が早く立ち上がって行ってあげなきゃ。もし怪我をしていたらどうしよう―――手あたり次第机を押し倒して、床の根に何度も躓き転びそうになる。今の俺を動かす原動力は、ひたすら早く早く、と焦る気持ちだけだ。
それなのに……こんなに教室は広かっただろうか。教室の端まで吹き飛ばされたわけでもないのに、いくら進んでも元居た場所にたどり着かない。これも幻覚の仕業だろうか、まるで沼の中をもがき泳いでいる気分だ。
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