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人を呪わば、穴二つ
―――冬はなぜこんなに寒いのか。
雪混じりの風が吹くたび、コートとマフラーの隙間を掻い潜る冷気に身体が震え、3歩あるけば鼻水が垂れる。歩道の反対側にはカップルが、これでもかと身体を密着させながら歩いている……別に、羨ましくなんかない。遠い背中に向かって、どっちか足が滑ればいいのにな、と可愛い呪いをかける程度だ。
……なーんて、神様今のウソだからね。滑る、とか中学3年の受験生にとっては禁句ワードだ。それに『人を呪わば穴二つ』なんて言うだろ?
「………ん?」
ふと、そのカップルが立ち止まった。
カップルと俺との距離は結構遠いが、男の方が辺りをキョロキョロと見渡したから、俺はなんとなく顔を背ける。
―――この雰囲気は、もしかしてアレじゃない?路上でキス、略して路チュー。え、こんな吹雪の中でするの!?俺、どうしてたらいい?歩いた方がいい?止まった方がいい!?
困惑する俺など知るはずもなく、男が女の首を覆っていたマフラーをそっと外す。
そして、ゆっくりと顔を近づけ―――女の首に、噛み付いたのだ。
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