人を呪わば、穴二つ

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「……で、お礼の言葉も知らないのか?」 「えっ、あ、そうだ!助けてくれて、本当に―――」 「あーやっぱいい。今回はこっちで。」 男が俺の首元に手を伸ばす。また胸倉を掴まれるかと思って咄嗟に頭を引いたが、掴まれたのはマフラーだった。 「えっと??」 ……掴み間違えか? 意図がよく分からずにいると、男は無言でマフラーを俺の首からほどいた。そして、そのままコートの襟元を、強く横に引っ張ったのだ。 上半身の体勢が一気に崩された俺の視界の隅で、コートのボタンが飛んでいくのが見える。 (こいつ、どんだけ馬鹿力だよ!?) 驚きで目を見開いた瞬間―――冷たい外気にさらされた首元に、男が噛みついた。
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