3464人が本棚に入れています
本棚に追加
/771ページ
「……で、お礼の言葉も知らないのか?」
「えっ、あ、そうだ!助けてくれて、本当に―――」
「あーやっぱいい。今回はこっちで。」
男が俺の首元に手を伸ばす。また胸倉を掴まれるかと思って咄嗟に頭を引いたが、掴まれたのはマフラーだった。
「えっと??」
……掴み間違えか?
意図がよく分からずにいると、男は無言でマフラーを俺の首からほどいた。そして、そのままコートの襟元を、強く横に引っ張ったのだ。
上半身の体勢が一気に崩された俺の視界の隅で、コートのボタンが飛んでいくのが見える。
(こいつ、どんだけ馬鹿力だよ!?)
驚きで目を見開いた瞬間―――冷たい外気にさらされた首元に、男が噛みついた。
最初のコメントを投稿しよう!