人を呪わば、穴二つ

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「おはよー秋人(あきと)。宿題見せ……なんかあった?」 すっかり冷え切った手で教室のドアを開けると、幼馴染で親友の間宮(まみや) (りく)が真っ先に声をかけてきた。 夏の大会を終え、野球部を引退してから数ヶ月経った今も食欲は衰えないらしい。椅子に座って大きなパンを咀嚼していた陸は、俺の顔を見上げると黒髪が伸びた頭を僅かに傾けた。 「朝からヤなもん見たの。……陸は、なんで俺の席で食べてんの?パンくず、すごいんだけど。」 「だってお前の席の方が暖房に近いし。そんで、なにを見たって?誰か雪で滑ったとか、階段から落ちたとか?」 「ああ、そっちの方がマシだったわ。……吸血、してたの。道端で。」 今でもはっきりと思い出せる―――男が女のマフラーを外し、女も自らコートの襟元を開いて頭を横に逸らす。そして、無防備になった首へ男が噛み付く――― 一切無駄のない流れだった。 「信じられるか?朝っぱら、しかもクソ寒い道の上でだぞ?せめて場所を選べよ!」 「ふーん。すげえ腹減ってたんじゃないの。……それか、その方が燃える、とか。」 「燃えるって何!?いちゃつくなら尚更、俺のいないとこでやれ!」 先月、「そろそろ受験に専念したいし…」という理由で 元カノに振られた俺としては、目の前でいちゃつかれることほど心の傷にしみる塩はない。 しかも、元カノは別れた後に俺のことを、「秋人は顔はいいけど、なんかアレだったんだよねー。」と言っていたらしい。アレってなんだよ、ドレだよ!?……どうせ俺は、顔も身長も勉強も運動も、どれも平均マンですよ。
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