ラミアとオリジン

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「……羽賀さん?」 「スズメですよ、日野君。……私、ラミアであることがお友達の役に立つなんて、思ってもみませんでした。」 「は?え、ちょ―――うわっ!!」 膝裏にも細い腕が回ってきたと思ったら、一気に俺の身体が宙に持ち上がった。―――え、ナニコレナニコレ、冗談だろ!?仰向けになったまま言葉も出ない俺の一方で、やけに近くにある羽賀さんの顔が、得意げに微笑んでいる。 「私が日野君を体育館まで運べばいいんですよ!」 「いやいやいやいや!!この体勢はさすがにマズいって!!俺1人で歩け――」 「あ…やっぱり私に運ばれるのは怖いですか?絶対、力加減間違えませんからっ……。」 「そうじゃなくて、このおお、お姫様抱っこが――」 「何も問題ない。早く行くぞ。」 「はい!」 「犬飼ふざけ――」 「日野君は安心して私に抱かれててください!」 「男前かよ!?ちょ、まっ……スズメさーーーーん!!」 誰か俺の話を聞いてくれ!!―――俺の叫びなど気にも留めず、猛スピードで走る羽賀さん…もといスズメに抱えられた俺は、割と本気で辞世の句を考えていた。 そして、体育館に着いた時にはちょうどEクラスの入場が終わり、これから点呼が始まるところだったらしい。入口に突然お姫様抱っこで現れた2名の生徒と、先導するように何食わぬ顔で赤絨毯を闊歩(かっぽ)する男子生徒に会場中が注目することとなった。 ………これが、後の『入学式バージンロード事件』である。 俺は高校生初日に大変不名誉な称号と、ちょっと変わってるけど、大切な2人の友人を手に入れたのであった。
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