3460人が本棚に入れています
本棚に追加
/770ページ
冷静に思い返せば、保健室の先生が「帰ったら良く冷やして、熱に注意してね」的なことを言っていたような気がする。
それに、犬飼の部屋に向かった辺りから、やけに息が切れるし身体が浮いてるような変な感じだったが……気に掛ける余裕なんてなかった。
(それで騒ぐだけ騒いで、結局ぶっ倒れてこいつの世話になるとか……俺何やってんの。いや、俺だけが悪いんじゃないけどさ。無理矢理吸血しようとしてきたのはあっちだし。)
……でも、お陰でいまは身体が少し怠い程度まで改善している。足だって、ちゃんと冷やされてる。
(ほんっとムカつく奴だけど、あの時も今も、もしこいつがいなかったら……もっと酷いことになってたよな。)
―――『痛いも風邪ひくも、生きてるからのことだろ。じゃあなんだ、あの時死んどけば良かったって話?』
(違う……助けてくれなかった方がよかった、なんてことを言いたいんじゃないんだ。今も―――ああもう!相手がどうであれ、ちゃんと分別はつけるべきだろ、俺!!)
覚悟を決めた俺は枕を抱きしめると、ジャケットを羽織ろうとしている背中を見つめた。
「あ、あのっ、…………ありがとうございました。」
「は?なんて?」
ぱちりと見開かれた、琥珀色の瞳が俺を見る。まるで幽霊でも見たような……こんな顔もするんだ。
最初のコメントを投稿しよう!