303号室の同居人

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冷静に思い返せば、保健室の先生が「帰ったら良く冷やして、熱に注意してね」的なことを言っていたような気がする。 それに、犬飼の部屋に向かった辺りから、やけに息が切れるし身体が浮いてるような変な感じだったが……気に掛ける余裕なんてなかった。 (それで騒ぐだけ騒いで、結局ぶっ倒れてこいつの世話になるとか……俺何やってんの。いや、俺だけが悪いんじゃないけどさ。無理矢理吸血しようとしてきたのはあっちだし。) ……でも、お陰でいまは身体が少し(だる)い程度まで改善している。足だって、ちゃんと冷やされてる。 (ほんっとムカつく奴だけど、あの時も今も、もしこいつがいなかったら……もっと酷いことになってたよな。) ―――『痛いも風邪ひくも、生きてるからのことだろ。じゃあなんだ、あの時死んどけば良かったって話?』 (違う……助けてくれなかった方がよかった、なんてことを言いたいんじゃないんだ。今も―――ああもう!相手がどうであれ、ちゃんと分別はつけるべきだろ、俺!!) 覚悟を決めた俺は枕を抱きしめると、ジャケットを羽織ろうとしている背中を見つめた。 「あ、あのっ、…………ありがとうございました。」 「は?なんて?」 ぱちりと見開かれた、琥珀色の瞳が俺を見る。まるで幽霊でも見たような……こんな顔もするんだ。
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