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「はぁ、はぁっ、……!、犬飼!」
ようやく、床に座り込んでいる犬飼の背中を捉えることが出来た。俺の声が聞こえなかったんだろうか、犬飼はこちらを振り向きはしない。…というより、じっと真上の方を見上げている。
『グギギギギギギ……!!』
「ひっ…!!」
黒板を爪でひっかいたような、背筋が寒くなる声が教室に響いた―――ちょうど、犬飼が座っている方からだ。椅子を飛び越えようとしていた足を止め、薄闇に目を凝らすと……なんと、あの黒い化け物が犬飼の正面に立っているじゃないか!
(そうか、犬飼はさっきからずっと化け物を見上げていたんだ!)
やばい、やばいやばいやばい、犬飼は歩けないんだから逃げれっこない!
というか、あの巨大な目ん玉に見下ろされて停止モードに入っちゃってる可能性が高い。だからほら、今にも犬飼を食べんとせんばかりに大きく開けられた口から黒い液体が床に垂れ落ちようと、目の前で飛沫が弾けようとも、微動だにせずに固まっているんだ。どうしよう、どうすれば犬飼を助けられる―――?
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