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だからといって、ドロドロの化け物と俺を間違えるなんてあんまりじゃないか。現実に戻ったら友情ぱわーについて、存分に語り合う必要がありそうだ。
『グ、グ、グ、ギャ、』
「待て!」
俺の叫び声が聞こえたらしい。スライム状の巨体をうねらせ、ゆっくり犬飼に覆い被さろうとしていた化け物が一瞬、動きを止めた。
化け物の白い目玉が、ギョロリと俺を見て………三日月に歪む。『お前の目の前で友人を食べてやるぞ』と、ほくそ笑んでいるように。
(お前なんかに食わせてたまるか!!)
全身がカッと熱くなった―――頭が真っ白になって、気付いたらがむしゃらに犬飼に向かって走りだしていた。
積み上がった机の山から転げ落ちようと、言うことを聞かない左腕を強くぶつけようと構うもんか。たとえ俺の全身がバラバラになったって気にしない。
「ぜぇ…はぁ…、おいこっちだ化け物!犬飼の前に、俺を食ってみろ!」
とにかく化け物の動きを止めたい一心で床に転がっていたチョークを拾い、化け物のデカい目玉に向かって放り投げる。目逸らしになればいいなという程度だったが、的が大きいおかげで、チョークはものの見事に目玉の真ん中にぶつかった。
……その瞬間、
『グオオオオオオオオ!!!』
雄叫びをあげた化け物は犬飼から跳ねるように遠ざかった。そこら中に黒い液体が飛び散り、溢れんばかりにひん剥いた眼球には、はち切れそうな血管が赤々と浮き出ている。
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