3543人が本棚に入れています
本棚に追加
すべての授業と放課後の自己学習を終え、学校を出た時にはすっかり日は落ち、外は真っ暗になっていた。
幸いにも雪は降っていないが、夜独特のキンとした寒さがコートの上から身体まで染みてくる。コンビニに寄って何か食いながら帰ろうかと思っていたが、雪が降る前にさっさと帰ったほうがよさそうだ。
「あー腹減ったぁ…。久しぶりに近道するか。」
情けない音を立てる腹をさすりつつ、いつも通る大通りへ続く道ではなく、小道へと歩を進める。夜は街灯が少ないせいで暗いし、人通りも少ないが、この道を選ぶだけで結構な時間短縮になるのだ。
ざくざくざく、ざくざくざく
スマホの電池が切れかけていたせいで、音楽を聴きながら帰るのは諦めた。半分凍っている雪を踏む俺の足音だけが闇に響く。
なんか……すごく寂しいんだけど。
やっぱり、陸が「俺も一緒に居残ろうか?」って言った時、断らなければよかったかも。それとも、明日からは暗くなる前に学校を出ようか。でも、家に帰ると「ちょっと休憩~」と速攻で寝るのは目に見えている。
そもそも、受験する高校のレベルを上げすぎたかもしれない。俺本当に、受かるのか……?
「いやいやいや、弱気になったら駄目だろ。この受験生活もあと少しだし、高校のランクを上げたのだって、あのオッサンみたいな変なラミアが少しでも居ない学園生活を送るためだ。俺は出来る子、俺はできる子だぞ日野 秋人……って、」
―――何か、聞こえる。
俺の足音じゃない、もっと小さな音だ。自分に気合を入れるのを中断し、足を止めて周囲に耳を澄ませてみる。するとまた、か細くて、高い音が途切れ途切れに聞こえてきた。
これは………たぶん、
「泣き声……女の子?」
最初のコメントを投稿しよう!