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「あ、お姫様抱っこの子だ。」
「たしか日野君、でしょ?私も入学式出たから知ってる!」
(なるほど、こういうことかー!!)
昨日色々ありすぎたおかげで、すっかり入学式のことなんて頭から吹っ飛んでいたが、周りは違ったようだ。廊下を歩く俺を見て、他の生徒たちがヒソヒソと話している……そりゃそうだ、入学式であんな入場をしたのは過去でもきっと俺とスズメ、そして犬飼だけだろう。
とにかく急いで周囲の目から遠ざかってしまいたいが、スピードが出ないのでどうしようもない。俺が必死にちまちま歩いていると、見かねたのか周囲から声が飛んできた。
「日野君、そこ段差あるから気を付けてな。」
「あっどうも。」
「脇に杖を押し付けちゃだめだよ。」
「は、はい、気を付けます。」
「ねーねーイケメン君はなんて名前なの?」
「間宮 陸っすー。」
「階段上がれる?私がお姫様抱っこしようか?」
「結構です!!」
「姫様が通るぞー道を開けろーっ。」
「お願いだからやめて!!!」
……き…消えたい。恥ずかしさで蒸発して消えてしまいたい。
いつの間にか女子と楽し気に連絡先を交換してる陸の一方で、俺はいますぐ中庭に飛び出し、松葉杖で穴を掘って埋まる想像ばかりしていた。
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