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どうしてこんな時間に女の子が?―――時折しゃくりあげる泣き声へ向かって、自然と早足になる。進むたびに聞こえる声が少し大きくなってきた。
とにかく声がする方向へと向かっていたので、目的地なんて気にしていなかったけれど、不規則に点滅する街灯を通り過ぎた辺りで、俺はやっと自分がどこに向かっているのかに気づいた。
「うわ、超久しぶり……。」
そこはまだ俺が小さいころ、よく遊びに来ていた思い出の公園だった。
…そして、俺がラミアに噛まれた、トラウマの公園でもある。
夜だからか、俺が大きくなったからだろうか。ここは、こんなに寒くて、狭くて、寂しい所だっただろうか。誰もいない公園で、遊具だけが黒い影となって佇んでいる。
「ひっ……ひっ……。」
「あ……っと、君、大丈夫?1人なの?」
いかんいかん、誰もいないだなんて。一瞬でも、肝心の女の子の存在を忘れてしまうとは。
声の方向に目をやると、ブランコの上にはやはり、幼稚園くらいの小さな女の子が座って泣いていた。耳の上で2つ結びをしていて、子供用のジャケットを羽織っているその子は、涙をいっぱいに浮かべた目で俺を見上げると小さくうなずいた。
「どうしてこんな所にいるの?お家わかる?」
「わ、かんない……。」
「迷子か……交番に行けばいいのか?とりあえずここは寒いし、夜は『ヴィズ』……怖いお化けが出るから、別の場所に」
「お、お化け出るの?やだ、どこにも行きたくない!」
「え!?あ、いや違くて……そうくるか。」
こ、子供ってむずかしー!!怖がらせてどうするよ俺!
ここにいると凍死の危険性もあるしヴィズはおろか、不審者にだって狙われそうだ。とにかく一緒に来てほしいのだが……どうしたら伝えられるだろうか?
俺は必死に、陸の年の離れた妹と遊んだときのことを思い出す。陸のやつ、妹を諭すときはどうやってたっけ…。
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