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悩んだ末にまずブランコの前にしゃがんで、目線を同じくらいにする。今はもう、女の子の目から涙は流れていないので少し安心した。
切羽詰まった感じで色々言うと、怖いから……できるだけ優しい感じの口調で、ゆっくり話しかけてみる。
「お、お兄ちゃんもね、実はいま迷子なんだ。」
「え……。」
おっ、顔が上がった。ぱちりと丸くなった目と視線が合う。
「すごく寂しいし、お腹もすいて泣きそうだ。」
「そうなの?だいじょうぶ?」
「もし君が一緒に来てくれたら、すごく頑張れる気がするよ。よかったら、俺のために一緒に来てくれない?」
「…………。」
少しの間のあと、女の子は小さくうなずいた。
よっっっしゃあーー!!でも俺いまやってること間違いなく不審者だぜくそー!!
「ありがとう。じゃあ、行こうか。」
女の子はぴょんとブランコから降りると、上目遣いで俺の手を握ってくる。よっぽど寒かったのだろう、手は氷のように冷たい。
俺はきょうだいがいないから、妹がいたらこんな感じだったのかもしれない。こんなに可愛かったら陸が溺愛するのも分かるなあ。
そんなことを考えていたら、女の子がにっこりと笑った。
「わたしも、お腹すいてたんだぁ。お兄ちゃんが寂しくないように、食べてあげるね。」
「―――は?」
ごめんいま、何て言った?そう聞き返すよりも早く、俺の視界は反転した。
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