人を呪わば、穴二つ

1/15
3442人が本棚に入れています
本棚に追加
/770ページ

人を呪わば、穴二つ

―――冬はなぜこんなに寒いのか。 雪混じりの風が吹くたび、コートとマフラーの隙間を掻い潜る冷気に身体が震え、3歩あるけば鼻水が垂れる。歩道の反対側にはカップルが、これでもかと身体を密着させながら歩いている……別に、羨ましくなんかない。遠い背中に向かって、どっちか足が滑ればいいのにな、と可愛い呪いをかける程度だ。 ……なーんて、神様今のウソだからね。滑る、とか中学3年の受験生にとっては禁句ワードだ。それに『人を呪わば穴二つ』なんて言うだろ? 「………ん?」 ふと、そのカップルが立ち止まった。 カップルと俺との距離は結構遠いが、男の方が辺りをキョロキョロと見渡したから、俺はなんとなく顔を背ける。 ―――この雰囲気は、もしかしてアレじゃない?路上でキス、略して路チュー。え、こんな吹雪の中でするの!?俺、どうしてたらいい?歩いた方がいい?止まった方がいい!? 困惑する俺など知るはずもなく、男が女の首を覆っていたマフラーをそっと外す。 そして、ゆっくりと顔を近づけ―――女の首に、噛み付いたのだ。
/770ページ

最初のコメントを投稿しよう!