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「嬉しいな、幸せだなって思ったんです。そしたら涙が出てきたんです」
僕は素直にそう言って『変ですよね?』なんて言っていた。
そんな僕の頭を十時さんはポンポンと優しく撫でてくださった。
「変じゃないですよ。そう思える雪の素直な気持ち、素敵です。僕も見習わなきゃ」
十時さんは静かにそうおっしゃられると本当に温かく微笑まれて歩きだされた。
僕はそんな十時さんのあとを静かに追った。
「僕は・・・たくさんのモノたちと出逢って、たくさんのモノたちとさようならをしてきた。そんな僕だけれど、僕は雪以上に純粋なモノを知らない」
そうポツリとおっしゃられた十時さんのそのお声はいつも以上に澄んでいて優しかった。
十時さんのそのお言葉に十時さんのそのお声に僕は僕の胸の内がどんどん温かくなっていくのを感じていた。
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