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『嫌』なんて言葉を口したら僕は僕じゃなくなってしまうと思っていたから。
僕は『いい子』だから『嫌』なんて言わない。
その前に『嫌』なんて言ったら僕の全てが壊れてしまうことを僕は知っていたから。
どんなに痛くても怖くても辛くても泣いちゃいけない。
僕は『いい子』だからいつか紗江子さんに褒めてもらえる。
ううん。
違う・・・。
僕は『いい子』にしていればいつか紗江子さんに褒めてもらえて認められて大切だと思われると思っていた。
そんな日なんて来ないと知りながら・・・。
けれど、そうしないと僕は壊れてしまうと知っていた。
僕は弱いから誰かに褒めてもらいたかった。
『いい子』と言って欲しかった。
僕は弱いから誰かに認められたかった。
『ここに居ていいよ』と言って欲しかった。
僕は弱いから大切だと思われたかった。
『大好き』と言って欲しかった。
けれど、そんな言葉、誰もくれなかった。
そう。
十時さんに出逢うまでは・・・。
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