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海
「雪。お疲れ様。今夜は僕が夕飯を作るから先にお風呂にでも入っておいで」
キッチンに据えられた食卓の上に食品の入ったビニール袋を置かれながら十時さんはそうおっしゃられると微かに微笑まれた。
十時さんのその微かな微笑みは温かなあの日に咲いていた白色に近い、ピンク色のあのたくさんの花に似ていた・・・。
「それなら・・・僕も手伝いますよ?」
僕の申し出に十時さんは『そう?』と小さなお声でおっしゃられると少し考えられたあとに『じゃあ、お願いしようかな?』と言ってくださった。
十時さんのそのお言葉に僕は微笑んで『はい!』とお答えして食卓の上に置かれたビニール袋の中から買ってきたばかりの食材を順番に取り出していった。
「あ、そうだ。雪」
何かを思い出されたかのようにそうおっしゃられた十時さんを僕はクルリと振り返った。
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