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「あの・・・『高額』とは・・・どう言った意味なのですか?」
僕の質問に雨月さんは穏やかに微笑まれた。
雨月さんのその温かい微笑みに僕の胸は苦しいほどにぎゅっとさせられた。
怖い・・・。
この幸せが壊れ、消えてしまうことが・・・。
ううん。
違う・・・。
きっとこれは夢なんだ・・・。
僕は長い長い夢を見ているんだ・・・。
目が覚めればこの幸せな時間は消えてしまう・・・。
目が覚めれば僕はまた・・・あの鳥籠の中だ・・・。
また、誰かに願わないと・・・。
現状から逃がしてください・・・と・・・。
「・・・雪」
雨月さんの声が聞こえた気がした。
夢なのに声が聞こえる。
夢なのに温かい・・ ・。
夢なのに・・・夢なのに・・・涙が止まらない・・・。
「雪。桜の元へ帰れ。そして、落ち着け。俺ではお前をうまく扱えない」
雨月さんの言葉に僕はゆるゆると首を横に振った。
まだ、僕は帰れない・・・。
例え、これが長い長い夢の中でも僕は十時さんからのお使いをきちんと済ませたい・・・。
そして、この夢が覚める時には十時さんの側に僕は居たい。
少しでも僕を鳥籠の中から逃がしてくれた十時さんの側に僕は居たい・・・。
そして、笑顔で言うんだ。
心いっぱいの感謝の気持ちを十時さんに・・・。
『ありがとうございました』
って・・・。
そしたら十時さん・・・どんなお顔をしてくださるのかな?
微笑んでくれるかな?
それとも・・・怒って僕のこと・・・。
「雪。桜はお前を叩いたりなどしはしない」
まただ・・・。
雨月さんは僕の心の内なんてお見通しだ。
僕の心の内を見るその技を『心読』と言うらしい。
そして、その『心読』は多くのモノノケが使うことのできる技だと雨月さんに僕は教わった。
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