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「雪。桜は何があってもお前を守るぞ。例え自分が傷付き、死んでも・・・な」
自分が傷付き・・・死んでも?
どうして?
どうして十時さんはそこまで僕にしてくれるのだろう?
こんな何もない空っぽの僕のために・・・。
わからない・・・。
わからないこと、知らないことは聞かないと・・・。
十時さんにそう教わった。
『わからないことは遠慮なく聞いてくださいね』
十時さんはいつもそうおっしゃってくださるのに・・・。
『わからないこと、知らないことはそのままにしてちゃ駄目なんです。知ることは怖いこともあります。けれどね、雪。知らないことは知ることよりも・・・』
逃げるな・・・。
僕はそう、僕に命令してみた。
逃げるな・・・。
もう一度、同じ命令を僕は僕にした。
『・・・わかったよ。』
もう一人の僕が渋々と言うようにそう返事を返してくれた。
ありがとう・・・。
もう一人の僕・・・。
「・・・雨月さん。教えてください。どうして十時さんがそこまで僕にしてくださるのかを・・・。そして、先ほどお訊ねしたことも・・・全部・・・」
全部なんて我が儘かな?
全部なんてご迷惑かな?
全部なんて・・・。
「わかった。歩きながら話そう。時間は永遠ではない」
雨月さんはそうおっしゃられるとクルリと回られてゆっくりと(恐らくは僕の歩幅に合わせて)歩きだされた。
僕はそんな雨月さんの背中に『はい』とお返事をお返しして雨月さんのあとを追った。
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