歌と女

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「・・・いつの世も犠牲になるのは子供だと言うことだ。・・・歩けるか?」 雨月(うげつ)さんの言葉に僕は『はい』とお答えして続きの一歩を踏み出した。 しかし、踏み出したその一歩は重たかった。 『いつの世も犠牲になるのは子供・・・』 それはグサリとくる言葉だった。 僕は歩きながら胸元にある『(まも)(いし)』を握りしめた。 こうすると本当に・・・落ち着く・・・。 「言い忘れていたがその『(まも)(いし)』は万能ではないぞ? いずれは削れてなくなるし、なくなればその効果もなくなる」 「・・・そう・・・なんですね」 僕は小走り気味に雨月(うげつ)さんの元へまで行き、雨月(うげつ)さんを仰いで苦い笑みを滲ませた。 なんとなく、そんな気はしていた。 「その『(まも)(いし)』がなくなるまでの間は俺が側に居ると思え。何かあれば先ほどのように馳せ参じる」 雨月(うげつ)さんはそうおっしゃられると僕の頭をポンポンと優しく撫でてくださっていた。 なのに・・・僕は・・・。 「・・・(せつ)。上から手を下ろされるのは怖いか?」 雨月(うげつ)さんのそのお言葉に僕の胸の奥はザクリと抉られた。 「・・・少し・・・だけ・・・。ごめんなさい・・・」 少し・・・。 それは嘘だ。 僕は上から手を下ろされ、頭を撫でられることが苦手だ。 ううん。 違う・・・。 苦手なんじゃない。 怖いんだ・・・。 叩かれる・・・。 そう思ってしまうから・・・。 雨月(うげつ)さんがそんなことをするはずがない。 萩月(はぎづき)さんがそんなことをするはずがない。 十時(ととき)さんがそんなことをするはずがない・・・。 頭ではわかっている。 けれど、僕の身体は強張ってしまう・・・。 そんな自分が僕は嫌いだ。 僕は臆病で卑怯で弱い・・・。 そんな自分が僕は嫌だし、嫌いだ・・・。
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