125人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・雪よ。わからないこと、知らないことはそのままにしていてはいけない。知ることは恐ろしい。だが、知らぬことは知ることよりも・・・恐ろしい」
雨月さんのその言葉に僕は苦く笑んで心の内で『まただ』と呟いていた。
また雨月さんは僕の心の内を見られている。
僕は心の内を見られるその『心読』と言う術がどうしても苦手だ。
僕がそう思う理由としたらなんだか恥ずかしいから・・・。
心の内を見られるのってなんだか恥ずかしい。
僕は弱い人間だから余計にそう思ってしまうのかも知れないけれど・・・。
そう言えば、はじめの頃は十時さんも僕の心の内を『心読』で読まれていたっけ・・・。
僕は少し前のことをぼんやりと思い出していた。
「・・・雪? どうした?」
「え? あ、いえ・・・『心読』って凄いんだなって思って・・・」
僕はそうお答えして『えへへへ』と笑っていた。
それに僕は内心、驚いていた。
僕・・・いつからこんな風に・・・。
「・・・いつも『心読』をしているわけではないんだが・・・。なぜ、今、俺が『心読』をしていると思った?」
僕の思考を遮った雨月さんはどことなく苦い笑みを浮かべられていた。
それに僕は申し訳ない気持ちにさせられたけれど、謝ることはしなかった。
なんとなく謝ることはしない方がいいように思えたから。
「前、十時さんに言われたんです。『わからないことや知らないことはそのままにしてちゃいけないよ』って。そのことを思い出しているときに雨月さんが同じことをおっしゃられたから『心読』をされたんだなって思ったんです」
僕の答えに雨月さんは『ふむ』と声を漏らされるとすぐにクスリと笑われた。
それは楽しそうに・・・面白そうに・・・そして、嬉しそうに・・・。
最初のコメントを投稿しよう!