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「はい。こんにちは。よく来たね。あれ? 雨月様の気配を感じたが・・・お帰りになられたかね?」
その人はそう言われると店の奥から出て来られて僕の横にまで来られると細い目で店の外をぐるりと見回された。
その人はほっそりとしたおじいちゃんで着物を着ていて杖をついていた。
そして、その細い目は笑っているように見える優しい目だった。
「あ、はい・・・。先ほどまで一緒だったんですが・・・。あの・・・雨月さんをご存知なんですか?」
僕の言葉を聞いてそのおじいちゃんは『はっはっはっ!』と笑われると『おいで』と言って店の奥に向かわれた。
僕は『はい』とお答えしてそのおじいちゃんのあとを追って店の奥へと向かった。
「僕はあのお方のことを・・・雨月様のことをよく知らないね?」
おじいちゃんはお店の奥に置かれていた錆び付いた椅子に落ち着くと僕にそう訊ねて僕に商品と思われる木の机に座ることを勧めてくれた。
僕は首を横に振ることでそれを断り、おじいちゃんの言葉を待った。
おじいちゃんは『座ってええんよ?』と言って細い目を更に細めて微笑んでくれた。
それに僕は微笑み返すことしかできなかった。
「あのお方はね『さん』付けでお呼びしていいようなお方じゃないんだよ。あのお方のお名前をお呼びする時は『様』をお付けするのが礼儀なんだ」
おじいちゃんのその言葉に僕は本当に申し訳ない気持ちにさせられた。
僕はまた、間違ってしまった・・・。
「けれど、僕だけは特別なんだろうね~・・・」
おじいちゃんのその言葉に僕は小首を傾げて『特別?』と訊ね返していた。
それにおじいちゃんはコクリと頷かれた。
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