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「うん。弟の・・・。もう死んで何十年も経つけどね。見つかってよかった」
おじいちゃんはそう言われると嬉しそうにそれを仕舞われた方の袖を撫でてまた微笑まれた。
「僕の弟はねお化けに殺されちゃったんだ」
お化けに・・・殺された?
僕は黙ったまま目を見開いた。
「僕にはまだ・・・早いお話だから話すのはやめようね。あ、そうだ」
おじいちゃんはそう言われると膝を叩き、杖をついて立ち上がり、店の隅に追いやられていた茶色の細い花瓶を手にされた。
「これを十時さんに渡してくれないかい? 目のお礼はまたするから、とりあえずはこれをと言って」
おじいちゃんはニコニコしながらそれを僕に差し出し『頼むよ』と言葉を付け加えられた。
僕は差し出されたその茶色の細い花瓶をしっかりと受け取って『はい!』と声を発した。
僕の返事を聞いたおじいちゃんは『いい返事やね』と言ってまた微笑んでくれた。
それに僕は微笑み返しておじいちゃんに深く頭を下げて店を出ようとそろそろと店の入り口へと向かった。
その途中、僕の目を引くモノがあった。
「・・・欲しいなら・・・持ってお帰り?」
おじいちゃんのその言葉に僕は目を丸くした。
そんなこと・・・。
「ここまで頑張って来てくれた僕へのプレゼントさ。持ってお帰り」
おじいちゃんの言葉に僕は戸惑いつつも頷いて目に留まったそれへと手を伸ばした。
「さ。店の外にお行き? 十時様がお待ちだよ?」
「えっ!?」
おじいちゃんのその言葉に僕は慌てて店の外へと目を向けた。
けれど、そこに十時さんのお姿はなかった。
「また僕と逢える日を楽しみにしているよ?」
おじいちゃんはそう言うと僕の背中をトンっと押して店の外へと僕を押し出した。
店の外に押し出された僕の視界はぐにゃりと歪み、揺れた。
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