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「ご、ごめんなさいッ!」
僕はぎゅっと目を閉じて十時さんに深々と頭を下げていた。
「・・・雪」
「ごめんなさいッ、ごめんなさいッ!!」
僕はただ、謝ることしかできなかった。
大事なモノだ。
それを僕は壊してしまいそうになった。
怒られて当たり前だ。
叩かれて殴られて蹴られて当たり前だ・・・。
けれど、痛いのは嫌だ。
怖いのも嫌だ・・・。
嗚呼・・・また僕は我が儘だ・・・。
「怪我をしなくてよかった」
「・・・へ?」
十時さんのその言葉に僕はおずおずと頭を上げた。
怪我?
「割れて怪我をしてたら大変だったから。・・・さ。中に入ろう? 小腹が空いたから何か用意してくれたら嬉しいな」
そう言われた十時さんの顔色を僕はこそこそと窺った。
十時さん・・・怒って・・・ない?
そんな疑問が僕を襲った。
怒って当たり前じゃないの?
僕は花瓶を落として割りそうになったのに・・・。
僕は怒られるべきじゃないの?
僕は怒られて怪我をして叩かれて殴られて蹴られて許してもらえるまで謝るべきじゃないの?
「・・・ごめんなさい」
僕はどうしていいのかわからなくなってその場に膝を着いて正座した。
それに十時さんは僅かに表情を曇らされた。
やっぱり・・・怒ってる・・・。
僕はそろそろと両手を砂利の上に揃えて着いて・・・。
「雪。よせ・・・」
これまで聞いたことのない十時さんのその低い声に僕はビクリとさせられた。
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