125人が本棚に入れています
本棚に追加
「雪。雪はどうしてそんなに謝るの? 僕は怒ってなんていないのに・・・」
十時さんはそう言われると僕と同じように砂利の上に膝を着かれた。
「あの・・・十時さん? お着物が汚れてしまいますよ?」
僕はそう言っておどおどしていた。
砂利に着いた僕の両手は恥ずかしいほど震えていた。
「そうだね。けれど、それを言うなら雪も同じなんじゃないのかな?」
同じ?
僕は何の反応も返せずに十時さんからのお言葉を待っていた。
「僕は本当に怒っていないし、雪がどうしてそんなに謝るのかもわからない。謝ることなんて何もないよ。花瓶は割れていないんだから。・・・それよりも・・・僕はそんなに怖い顔をしているのかな?」
そう言われた十時さんは本当に困られているご様子だった。
違う・・・。
そうじゃない・・・。
悪いのは僕で十時さんじゃない・・・。
「十時さんは悪くないんです。悪いのは僕なんです。僕・・・どうしたらいいのかわからなくて・・・」
僕は本当のことを言おうと俯けていた顔を上げた。
顔を上げた先でどこか痛そうにしている十時さんと視線が合わさった。
十時さんは僕と視線が合わさるとすぐに微笑んでくださった。
・・・ちょっと・・・苦そうに。
「僕・・・ずっと怒られてて。もう怒られることが癖になってて・・・。怒られることだけじゃなくて叩かれることも殴られることも蹴られることも癖になってて・・・。謝る時は土下座をしなさいって言われててそれで・・・それで・・・」
嗚呼・・・まただ・・・。
また僕は怒られることをしている・・・。
泣いちゃいけないのに僕はまた泣いている・・・。
最初のコメントを投稿しよう!