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僕が・・・寂しい?
十時さんは僕のことを気に掛けてくれているの?
こんな何も役に立たない僕のことを?
「雪はお花は嫌い?」
十時さんの質問に僕は首をふるふると横に振って小さな声で『好きです』とお答えした。
お花は好きだ。
けれど、僕はお花の名前を何も知らない。
あ・・・けれど、僕でも知っているお花が一つだけあった。
それは『曼珠沙華』と言う真っ赤なお花だった。
『・・・死人花』
もう一人の僕がポツリと呟いた。
嗚呼・・・そうも言っていたっけ・・・。
僕は少し前の出来事をぼんやりと思い出していた。
「雪? どうかしたの? 具合でも悪い? それとも疲れちゃった?」
十時さんはそう僕を気に掛けてくださると屈んで僕の顔を覗き込み『う~ん・・・』と唸られた。
「・・・顔色は悪くないような気がするけれど・・・距離があったから疲れさせちゃったかな? ごめんね? 僕が行くべきだったね」
十時さんの言葉に僕は首が飛んでいってしまうんじゃないかと言うほど激しく横に振った。
それを見て十時さんはキョトンとされていた。
「違うんです! 僕は体調も悪くないし、疲れてもいません! ただ、ちょっと十時さんに驚かされただけで・・・」
僕はそこで言葉を飲み込み、片手で口を塞いだ。
『十時さんに驚かされただけで』
僕・・・いけないことを言ってしまった・・・。
僕は十時さんに慌てて頭を下げた。
それに十時さんは『雪?』と戸惑っているような声を発せられた。
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