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「ごめんなさいッ!! 僕、十時さんのせいにしてしまいました!! 悪いのはぼ・・・!?」
僕の口は十時さんの長い人差し指に塞がれた。
僕は僕の唇と鼻先に当てられた十時さんの長い指先をじっと見つめ見たあと、十時さんの顔へと目を向けた。
「雪。雪は何も悪いことなんてしてないよ? だから雪は謝らなくていいし、僕はそんなことじゃ怒らないよ。それよりも雪は僕の何に驚いたの? 僕に教えてくれない?」
十時さんはそう言い終わると僕の唇と鼻先から長い人差し指を退けて小さな溜め息を吐き出された。
あ・・・れ?
僕は十時さんをじっと見つめ見てなんとなく察し、十時さんの質問には手短にお答えしようと決めた。
「僕・・・嬉しかったんです。十時さんが僕を気遣ってくださっていることが」
僕はそうとだけお答えして十時さんの横を通り抜け、母屋の玄関へと向かった。
僕はただ、嬉しかった。
僕が寂しい思いをしているのではないかと気に掛けてくださったことも大切な花瓶を僕の部屋に置こうとしてくださったことも・・・。
十時さんは本当に優しい・・・。
「共に暮らしているから気にも掛けるよ。それに雪はいつも僕にたくさんのモノを与えてくれているから」
「え?」
僕は母屋の玄関の戸口に掛けかけた手を慌てて引っ込めた。
まるで、熱い物に触れてしまった時のように。
「さ。中に入ろう?」
十時さんの促しに僕は素直に従い、母屋の玄関の戸口を開け放った。
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