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「よかったら一緒におやつにしない? 雪も疲れたでしょう?」
十時さんはそう言われると『よいしょ』と言われて立たれようとされたから僕は慌てて声を発した。
「だ、大丈夫です!」
そう声を発した僕の声は見事に裏返っていた。
そんな僕を見て十時さんはキョトンとされていた。
「僕なら大丈夫ですからお気になさらず!」
僕はそう言って裏返ってしまった声が恥ずかしくて小さな咳をわざとしてみた。
それに十時さんはまた心配気なお顔をされていた。
「雪・・・風邪? 大丈夫?」
十時さんはまたそう心配してくださると僅かに腰を浮かせて立っている僕の額に手を当てて『熱はないみたいだけれど』と呟かれた。
嗚呼・・・違うのに・・・!
「ち、違いますっ! 今のは声が裏返ってしまったのが恥ずかしくてそれでっ!」
僕は必死に咳の説明をしていた。
それを見て十時さんは『よかった』と呟かれてお盆の上のお菓子に手を伸ばされてそれを半分に千切られた。
「雪。お座り。少し・・・お話をしよう?」
「は、はい!」
僕は十時さんと向かい合うように座って十時さんの前に淹れたてのお茶をそっと差し出した。
・・・熱いかな?
僕はそんな心配をしていた。
熱すぎたら怒られる。
・・・それとも・・・温いかな?
僕はまたそんな心配をしていた。
けれど・・・温くても怒られる。
熱すぎたら頭からそれをかけられるし、温ければコップが飛んでくる・・・。
どちらも痛くて怖い・・・。
「・・・雪」
十時さんの呼び掛けに僕はビクリとして十時さんの湯飲みから視線を上げ、おろおろと十時さんを見つめ見た。
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