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「半分、お食べ?」
「・・・え?」
僕は僕の前に差し出された半分にされたお菓子に戸惑った。
「『カステラ』なんだけれど・・・嫌いかな?」
十時さんはそう言われると何かを探すように目だけを動かされて小首を傾げられた。
それに僕は思い当たることがあって『あ・・・』と声を漏らしていた。
「ごめんなさいっ! アイスクリームですよね!?
すぐに持ってきます!! 」
僕は慌てて立ち上がり部屋を出ようとしたけれど、それを十時さんは『取りに行かなくていいよ』と優しい声でおっしゃられて僕にまた座るように指示を出された。
それに僕はびくびくしながら従って小さな声で『ごめんなさい』とまた謝っていた。
「大丈夫だから謝らないで。それより・・・はい」
十時さんはそうおっしゃられると再び僕の前に『カステラ』と言うそのお菓子を差し出し、受け取りを戸惑う僕をそっと促してくれたけれど、僕はまだ受け取りを心の内のどこかで拒んでいた。
「お食べ? 甘くて美味しいよ? あ・・・もしかして雪は甘いものが嫌いなのかな?」
十時さんのお言葉に僕はゆるゆると首を横に振って『好きです』と呟いた。
甘いものは好き。
けれど、僕はあんまり甘いものを食べた覚えがない。
差し出された『カステラ』と言うその美味しそうなお菓子もはじめてだ。
「そう。よかった。・・・さ。どうぞ?」
十時さんのその押しに僕はおずおずとその差し出された『カステラ』へと手を伸ばした。
受け取ったその『カステラ』と言うお菓子は見た目通り、フワッとしていた。
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