125人が本棚に入れています
本棚に追加
歌と女
十時さんのお宅を出て十分ほど歩いた頃、僕は変な歌を耳にした。
その場に足を止めた僕はその歌の聴こえてくる方へと目を向けた。
その歌の聴こえてきている方には一軒の白い立派な建物があった。
その建物はちょっと変わった屋根の形をしていて周りは木でできた塀で囲われていた。
そして、その門のところには何か文字が書かれていたけれど、それを僕は読むことができなかった。
「・・・なんて・・・歌なんだろう?」
僕はその歌の聴こえてきているその建物へと近づこうとした。
その時だった・・・。
チリっとした痛みが僕の胸元を襲った。
何かしら?
僕はその痛みの元を探るべく、着ている服の首元を摘まんで伸ばし、服の中を覗き見た。
石だ・・・。
すぐにそれが原因だとわかった。
『彼の岸』で出逢った雨月さんと言う人からいただいた『護り石』。
その『護り石』は萩月さんからいただいた赤色の綺麗な小さな布の袋の中で中が透けるほど強く、輝いていた。
僕はその『護り石』の入った布の袋を首に下げて毎日を過ごしていた。
言われた通り『肌身離さず』に・・・。
「・・・どうして・・・光ってるんだろう?」
僕はそう呟いてふと視線を上げた。
もしかしたら・・・。
最初のコメントを投稿しよう!