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僕はその場から一歩引いて、すぐに『護り石』へと目を向けた。
『護り石』からは僅かに輝きが失われ、胸元に感じていたチリっとした痛みも和らいでいた。
僕は数回の深呼吸を繰り返したあと今度は二歩ほど前に歩み出てみた。
チリリッ・・・。
「いったい・・・」
僕はその痛みに堪えつつ二歩、後ろに下がり、小さな声で『やっぱり・・・』と呟いていた。
やっぱり・・・そうなんだ・・・。
雨月さんから頂いたその『護り石』はその歌が聴こえてきている建物に僕を近づけないようにしていた。
それはどうしてかはわからないけれど・・・。
「もう・・・関わりたくないのに・・・」
そんな声がそんな言葉が不意に聞こえてきた。
僕はその声とその言葉が聞こえてきた方へと目を向けた。
そこには一人の女性が居て、その女性はひどく暗いお顔をされていた。
その暗いお顔はどうにもならない何かを思い悩んでいるようなそんなお顔だった。
その上、その女性の回りには・・・。
あれ?
何で?
僕は目を擦った。
やっぱり・・・気のせいじゃない。
僕の目はおかしくなってしまっていた。
僕の目には黒い煙のようなモノが視えるようになっていた。
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