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「その分は取っておいて。もうそろそろ・・・来るから」
十時さんはそうおっしゃられるとニコリとされて開け放たれている離れの窓の外へと目を向けられた。
「・・・来たね」
「え?」
十時さんのそのお言葉に僕は釣られるように広いお庭へと目を向けた。
それと同時に十時さんは立ち上がられて縁側へと向かわれた。
「久しぶり。朱烏」
そうおっしゃられた十時さんの声は明るくて嬉しそうだった。
何て言うのか・・・凄く親しい人に話し掛けるときの声・・・みたいな・・・。
「ああ、久しぶり。変わりは・・・あったみたいだな。祝言でも挙げたのかい?」
その低い声と共に空から現れたのは真っ赤な羽をした大きな鳥さんだった。
「まさか」
十時さんはそうおっしゃられると苦く微笑まれてバサバサと羽ばたいているその鳥さんに右腕を差し出した。
十時さんに腕を差し出されたその真っ赤な鳥さんは十時さんの腕に留まるとその立派な翼を閉じられた。
「まあ・・・ちらほらと噂は聞いているよ。『招きの子を飼いだした』・・・と」
鳥さんはそう言うと僕の方をじっと見つめられた。
それに僕は背筋を伸ばして小さく頭を下げることしかできなかった。
「・・・またお前さんも面白いことをするね」
鳥さんはそう言われると『クックック』と笑われた。
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