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「雪。何も案ずるな。お前はもう、一人ではない」
僅かに笑んでそうおっしゃってくださった雨月さんに僕は『はい』とお答えしてシャツの下にある『護り石』をぎゅっと握りしめてみた。
握りしめた『護り石』は当然、固かった。
石だから固い・・・。
それは当然のことだけれど、僕にとってはそれさえも当然のことではない。
学校に通い、勉強をし、友達と遊ぶ・・・。
読み書きを習い、計算を教わり、歌を習う・・・。
朝起きて、顔を洗い、朝食を取る・・・。
それさえもそんな当たり前のことさえも僕は今まで出来ていなかった・・・。
いや、許されていなかった・・・。
僕は鳥籠の中の翼の折れた死にかけの鳥だった。
そんな鳥を一体、誰が飼ってくれるのだろう?
死を待つだけの惨たらしい汚い鳥など誰も欲しがらない・・・。
綺麗な翼が欲しい・・・。
大空を羽ばたける綺麗な翼が・・・。
強い翼が欲しい・・・。
どんな風雨にも負けずに羽ばたける強い翼が・・・。
けれど、僕には翼よりも欲しいものがあった。
それは・・・自由・・・。
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