歌と女

6/21
前へ
/163ページ
次へ
翼の折れた死を待つだけの惨たらしい汚い鳥の僕には鳥籠を壊す力などなかった。 だから、僕は願った・・・。 何度も・・・何度も・・・。 『この鳥籠の中から僕を逃がしてください』 ・・・と。 誰に願ったの? わからない・・・。 何に願ったの? わからない・・・。 僕には僕を助けてくれる人なんて居なかった。 僕は確かに生きているのに死んでいた・・・。 お腹は空く。 けれど、食事はほとんど取れなかった。 何か失敗をすればすぐに怒鳴られ、物が飛んできた。 当たれば痛い。 けれど、避けることは許されなかった。 避ければ殴られる・・・。 けれど、避けなくても殴られる・・・。 痛い・・・痛い・・・痛い・・・。 その言葉を発することさえ僕は許されていなかった。 だから僕は唇を強く噛みしめて痛みに堪えていた。 いつ終わるかもわからないその暴力とその怒声に・・・。 もう、やめてっ!! 僕は何度も何度も心の内で叫んだ。 けれど、その心の叫びは届かなかった。 聞こえてくるのはいつだって怒声と嘲笑だけ・・・。 誰も僕なんかを助けてくれない・・・。 誰も僕なんかを気に掛けてくれない・・・。 誰も僕なんかを必要としていない・・・。 誰も僕なんかを愛していない・・・。 僕なんか・・・僕なんか・・・。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加