まずは一人から…

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 幽子(ゆうこ)は、幽霊の絵を描くのが趣味であり仕事だった。  彼女のアトリエは、海のそばに建つ別荘の地下にあった。  毎月、畳一帖(たたみ いちじょう)ほどあるキャンパスを縦位置にして、一人の幽霊を描いた。  実に美しく、華麗――だが、足が無いのが特徴だ。  その夜も、そんな感じの幽霊の絵を描き、筆を置くと、 「さー、出ておいでー」  すると、スーッとその幽霊の絵は、キャンバスから抜け出て、彼女の前に現れた。  そして彼女と、適当な雑談をすると、キャンバスに戻った。  幽子は、隣の寝室へ向かうのだった。
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