1話

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 都会の街に出て、もう十年くらいがたっただろうか  俺は仕事を辞めた。仕事内容、人間関係、今までどんなに辛くても何とか乗り越えてきた。  でもある日、糸がプッツリと切れたように、全身の力が抜けてしまったのだ。  無理なスケジュールも何とかこなし、人と意見が対立しても妥協点を探して丸くおさめたりと色々頑張ってきた。  今思えば、俺はこんなことのために家を出て行ったのかと自分を責めたくなる。  新幹線の中、コンビニで買った安い酒を飲みながら、外を見つめていた。  長い間乗っていた新幹線を降りて、タクシーに乗り込む。  暫く走ると、窓から見える景色から大きな建物が徐々に消えていく。気づけば、田んぼや畑ばかりの変化のない景色になっていた。  ぼんやりとしていると大きな瓦屋根の家が見えてきた。ここが目的地だ。  タクシーから降り、目の前の建物を前にすると、帰ってきた実感が湧いてくる。  しかし、それと同時に不安や緊張が俺の心を覆い尽くす。
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